気ままに読み解き

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「三匹の子豚」解説【ジョセフ・ジェイコブズ】

憧れは理解から最も遠い感情と言いますが、軽蔑も理解から最も遠い感情です。

正しく尊重するのは難しいことですが、正しく見下すのも同じくらい難しいことなのです。

 

 

あらすじ

動物も言葉を話していた、昔々のお話です。

三匹の子豚は、親から独り立ちすることになりました。

最初の子豚は、わらで家を作りましたが、狼の息に吹き飛ばされ、食べられてしまいます。

二番目の子豚は、低木で家を作りましたが、同じように狼の息に吹き飛ばされ、食べられてしまいます。

三番目の子豚は、レンガで家を作ります。狼は息を吹きますが、家はビクともしません。

壊せないと知った狼は作戦変更、外に誘き出すことを考えます。

狼はカブ畑に誘いますが、子豚は早い時間にカブを回収して、家に帰ってしまいます。

次は、リンゴ取りに誘います。子豚はまた早い時間に行きますが、狼が来てしまいました。子豚はリンゴを囮にして、その隙に逃げます。

今度は、村のお祭りに誘います。子豚はまた早く行って帰りますが、狼の姿を見ます。子豚は、お祭りの屋台で買っていたバター撹拌機の中に入って、ゴロゴロ転がり落ちて帰宅します。狼はそのゴロゴロ転がるものにビビります。

そのことを、家の外から狼は子豚に伝えると、「それは自分だよ。僕みたいな子豚に狼がビビるなんてダッサ」と、子豚は挑発します。キレた狼は「煙突からお前の家に入ってやる」と言って、家の中に侵入しますが、熱々の鍋に落ちてしまい、そのまま煮込まれて死んでしまいました。

豚は夕飯になった狼を食べて、その後幸せに暮らしましたとさ。めでたし。めでたし。

(あらすじ終わり)

 

三番目の子豚が知恵を働かせて、狼を倒すという話です。

物語そのものは昔からあったそうですが、本記事では、最も知られているバージョンであるジョセフ・ジェイコブズ版を基にしました。この方は、イギリスの民話を研究しまして、イギリス版グリム兄弟、ペローと言うべき人物です。

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全体構成

冒頭を除けば、対称構造になっています。

黄色の部分を見比べますと、三匹の子豚が一匹の子豚になる話です。

一匹だけ生き残った理由は、他の子豚や狼より頭が良かったからです。ここだけ見るなら、主張は「頭の良い生き物が生き残る」です。そりゃあそうでしょう。もう少し具体的に掘り下げていきます。

 

子豚たちの家造り

物語の前半は、三匹の子豚と狼が「家」を舞台に対決する場面です。

ここで運命を分けたのは、子豚達の家造りにおける考え方です。一体、何が違っていたのか。狼のような外敵への備えです。

家を作る目的には、「落ち着いて暮らせる場所を得ること」と「自分の命を守ること」の二つがあります。ところが、最初の二匹の子豚は、快適さの確保だけに頭がいっぱいで、外敵から身を守ることを全く考えていませんでした。

だから、彼らの家は狼の一息で吹き飛ばされ、食べられてしまいます。

対称的に三番目の子豚は、狼の存在を想定した上で、レンガの頑丈な家を作りました。

家造りだけ見ても、自分の生存を左右する決定的な差が生まれているのです。

 

外での駆け引き

家を壊せないと悟った狼は、子豚を外に誘い出して食べようとします。
しかし、子豚は、狼の誘いが自分を罠にかけるための行動だと見抜いていたため、約束の時間より早く現地に向かうなどして、回避しました。

同様に、狼が最後に「煙突から入る」と言葉にした時も、子豚はその行動を予測し、鍋を用意して迎え撃つことができました。

狼が負けた理由は明らかでして、「豚を食いたい」という目的があまりにもバレバレだったからです。自らの欲望に忠実すぎて、相手が何を考えているか、推測しようともしませんでした。恐らく、どうせ豚だと見くびっていたのでしょう。侮っていたからこそ、子豚に何度も裏をかかれたり、あからさまな挑発に乗ってしまいました。

逆に子豚は、狼の性格や言動の意図を正確に把握しています。そこから、危機を予測して回避したり、狼への反撃に活かしています。

このようなキャラの対比からも構成からも、主張は明らかでして「敵をよく知る者が生き残る」です。
豚のように力では劣っていても、相手の考えていることを理解していれば、劇中の狼のように圧倒的な脅威ではなくなりますから。

西洋文化の伝統として、長く読み継がれてきた本作ですが、言い換えると、西洋文化の根底の一つがこれになります。あちらでは生き残るために、まず敵を理解することが不可欠なのです。敵の理解を怠った末路が、本作の二匹の子豚と狼ですから。

物語を理解する姿勢が、そのまま社会や世界の流れを把握する姿勢につながっているのですね。複雑怪奇な国際情勢に強いのも納得です。

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こういうのを基礎教養として持っている連中には、一筋縄じゃいきませんね。下手したら、こっちが狼や二匹の子豚になってしまいますから。なかなか勉強になるお話です。